毒食わらば皿まで

全ての始まりはとある人から一通のメール、送り主は昔の私が片足突っ込んでた業界の方だった。
その内容は昔私がしていた事をネットでバラすぞ、というものだった。「昔していた事」等と曖昧に書いてしまい申し訳ないのだがあまり人様に言えるようなことをしてこなかったのだ。
どうしたらいいのかと尋ねるメールを送るとすぐにリアルでまた会いたい、と返ってきた。
流石にもう足を洗った身、両親にも迷惑をかけられないしでどうする事も出来ない、断りきれず会ってしまったのがつい2週間程前の話だ。
自暴自棄になってそれから何日か電話とビデオ通話を繰り返している。

私は同性が好きだし男性に好意が向くことはない。足を洗う前、あの業界にいた頃も残念ながら男性からの綺麗だねも可愛いねも好きだよも全て嘘だと思っていたし微塵も嬉しいと感じられなかった。

その業界に入る頃父親から「お前のせいで家庭がぐちゃぐちゃになった」といわれ親友から虐められて、先生や親戚には過度な期待を持たれて。
他人に父親のことを相談したら父親が悪いという話になるけれど、その人たちがいなくなったら殴られるからそんなこと出来るはずもなく。
笑って、笑って、笑って。助けてということを辞めた。でも、それなら自分で父親に言えばよかった。殴られても蹴られても、そうしたなら、と今なら思う。
しかしその頃の私はあまりに愚かで、「そんなに私が悪いならもういい子を辞めてしまおう、自分を傷付けてあの人が困ればいい。」と思ったのだ。
業界に入った理由はそれだった。

だから所詮は他人で、どんな顔をしていようがどんな声をしていようがどんな性格であろうが、私が愛した振りをすれば私を傷つけてくれる相手でしかなかった。

後悔していないなんて意地は張らない。私はあの業界にいたことは黒歴史だし誰にも知られたくないし、周りに知られるのは怖い。
そうじゃなくとも突然皆が綺麗で自分はこんなに汚れてるんだと思って涙が出たり、悲しくなったりする。入浴中鏡に映る自分を見て自嘲する事も珍しくない。

その人の話によれば昔あの業界に居た頃使っていたアカウントもあり、フォロワーID等もメモを取っているらしい、本当に迂闊だと思う。

その穴埋めでは無いけれど何時もの仲のいい人以外の人に吐き出したくなって新しい縁を求めて同性愛者の掲示板を見に行ってみたら案の定三回裏切られた。
馬鹿馬鹿しいし冷静な判断ができていればきっとそんな事にもならなかったのだろうがもう何もかも嫌になってデパスを少し多めに飲んだ、と言っても1.5mg程度でODにもならないのだけれど少し落ち着きたかった。
その後菫ちゃんに電話していいかと尋ねるといいよ、と返ってきたので、掛けてみたら菫ちゃんが出た。
私が菫ちゃんに掛けたのだから当たり前ではあるがそれが嬉し過ぎて「菫ちゃんだ…菫ちゃんなんだ…」と言って泣いてしまった。
菫ちゃんはえ、え、俺が泣かしたみたいになってるの?!と慌ててたけどもうそれどころではなくて、泣いても何も変わらないとのに涙だけ出てきて惨めでさらに苦しくなった。

二週間前といえば私がとある人に課題を出した時だ、あの時私は3人で通話をしていたのだが発狂して、いつもの破壊衝動に襲われたのもその頃なのをお気づきだろうか。
話が脱線した、この件に関して私に成す術はない。
メールの相手が飽きるまで玩具になるしかない。

毒食わらば皿まで。
汚れてしまっているなら、何処まで汚れてももう一緒だ。
私は本来誰かの傍にいる資格はないし、誰かに慕われる要素も無ければ人を好きになる権利もない。否きっと他人が同じことを言えばそんな事ないと否定できるのだろうが、自分には出来ない。
矛盾だと自分も思うがきっと人間なんてそんなもの…だと思う。

全ての表の業界から消えてまた元の業界に戻れば何時かバラされてしまうのではないかなんて不安も無くなるのにそれを出来ないでいる。界隈から消えても私はあの頃の夢を何度も見て、何度もフラッシュバックして頭痛と吐き気に襲われた。
笑って「好きですよ」と言う私の滑稽な事この上ない。
嘘だと分かりながら世辞に溺れて、愛を嘯く、相手を求めてる振りをして笑って幸せを装うそんな自分の汚さに自分が一番気づいてしまっている

そして昨夜とある人のTwitterをリムった
要因は沢山あるでもきっと一言で言うなら汚い自分を見られたくなかったのだ
幾ら綺麗にしても取れない傷も、過去も、暴言も、そして裏切られた事を人のせいにしてしまう自分も。何もかも怖くなって。
切ったら余計嫌われることはあの人の話を聞いて知っていたし、あの人は鈍いからきっと気づかないだろうとどこかで思っていた。
でもあの人を切る事も死ぬ程辛いけどあの人に嫌われる事はもっと辛かったのだ。
死ねないのに死ぬより辛いなんてどうかしてると思う。
決して興味がなくなったとか嫌いになったとか、そんなのではないし、もし私が違う人生を歩んで今より少しでも綺麗な人間でいたのなら死んでも縁を切ったりしなかった。それは、断言出来る。

こんな事を書くつもりは無かったのだけれど、何処か今の友人に目のつかないところにばっと書きたかったのが大きい。
もしこれを読んだなら、忘れてくれとは言わないけれど無かったことにして欲しい

それでは御早う世界